クズの可能性、バイオ燃料の原料へ

クズという植物の名前を一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。クズ粉、クズ餅などの原料として用いられ、秋の七草として古くから人々に親しまれてきた植物の一つです。  

しかし、このクズが今その名のとおり邪魔な雑草として問題となっています。クズは非常に繁殖力が強く、油断しているとあっという間に植物を覆い尽くし、時には樹木をも枯らしてしまいます。この繁殖力の強さと、蔓が絡まって植物を覆いつくす見た目の悪さから、まさに植物の屑といった扱いを受けています。  

樹木を覆うクズ

しかし、このクズはクズ粉、葛根湯の原料となる薬草、若葉は山菜に、ツルは葛布など繊維の原料として捨てる場所が無いくらい大切に利用され、人々の生活に無くてはならない植物の一つでした。  

今でも一部このような利用は行われていますが、手間がかかることから現在では利用されることは希な状況です。現在、クズ粉やクズ餅として販売されているものの多くも、実際にはジャガイモなどを原料として作られるものが多くなっています。  

しかし、このクズが再び脚光を浴びようとしています。それは、バイオ燃料としての利用です。クズの根は良質なデンプンを多く含み、高濃度のアルコールが生成できることが近年の研究で明らかとなり、バイオ燃料の原料として注目を集めています。  

場所を選ばずどんな環境にでも適応できる繁殖力は、火山噴火後に植生が無くなってしまった場所の植生回復に用いられるほどで、この逞しい繁殖力を燃料として利用することができれば、将来的には持続可能エネルギーとして利用される日を遠くないことかもしれません。  

以前は人々のそばで様々な形で利用され、秋の七草として親しまれてきたクズ、一時は人々に見放されてその名の通り屑のような扱いを受けてしまったクズ、そんなクズが再び脚光を浴びようとしていることは喜ばしいことです。  

昔は一家の大黒柱として期待され、子供たちにもしたわれたお父さん、その後だんだんと居場所を無くし、家庭内で粗大ゴミのような扱いを受けているお父さんにも、いつか再び脚光を浴びる日がくることを私は願っています。
自然の伝道師

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