しかし、イネ科の植物にはバラ科の植物のようにトゲで食べられるのを防ぐことはできません。そこで、イネ科の植物は土の中のケイ素を多く吸収し、葉っぱを硬くすることに成功しました。ケイ素はガラスの原料にも使われる鉱物で、植物にとって栄養素としてはそれほど役に立っておらず、主に葉っぱなどを硬くするために吸収されているのではないかと言われています。
しかし、草食動物はこれに対抗する手段を身に付けました。それが反芻という仕組みです。消化の悪いイネ科の雑草を四つの胃と微生物の力で消化するという離れ業です。 この仕組みによって、草食動物は硬いイネ科植物を餌とすることに成功したのです。
しかし、イネ科植物もこのままでは絶滅してしまいます。このため、イネ科植物は生長点を低くすることによって、食べられてもすぐに再生できるという術を手に入れました。 このようなお互いの仕組みによって、現在は均衡が保たれた状態となっています。
しかし、このイネ科植物の生長点が低いという特性が人間にとっては厄介なものとなっています。 農業をやられている方なら、水田の周りなどで草を刈ってもすぐに伸びてしまうという経験をお持ちの方も多いのではないかと思います。これは、イネ科植物のこのような性質によるものです。
更に厄介なことに、水田のイネと畦などに生えるイネ科植物は同じ科の植物であるために害虫も共通しています。 畦などの草を低く刈ることによって、畦の草の多くはイネ科植物となってしまい、結果としてイネに害虫が付きやすい状況となってしまいます。
イネ科植物が畦に増えるのを防ぐには、地上から15cm程度の高さで草を刈るのがいいと言われています。 多様な草が生え、イネの害虫が少なくなるほか、害虫の天敵も増え結果として農薬の散布回数を減らすことができる可能性もあります。一度お試しください。
さて、イネ科植物の硬くなった葉を巧みに利用してきた動物が草食動物のほかにもいることをご存じですか、それは人間です。 茅葺屋根などの材料はススキなどのイネ科植物が利用されています。ススキは葉のほかに茎にもケイ酸が多く含まれていて、軽いのに硬くて丈夫、腐り難くく、水をはじき、茎の中が中空になっているので断熱性にも富んでいます。
こんな植物の特性を巧みに利用した私たちのご先祖様の知恵には頭が下がります。
自然の伝道師
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