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立地適正化と鎮玉地区のおかれた現状

浜松市北区引佐町の鎮玉地区では現在65歳以上の高齢者の割合が4割を超え、準限界集落と呼ばれる状況に陥っています。10 数年後には高齢者の割合が5割を超え限界集落と呼ばれる水準に到達します。限界集落と呼ばれる水準に到達すると、基本的に集落の維持及び再生は困難な状況に陥ります。

65歳以上の高齢者の割合が4割を超える
鎮玉地区の人口は20年後には1000人を切り国土交通省が無居住化するとしている2050年には300人程度になる見通しです

浜松市北区引佐町では花平より北側の集落がこの状況に陥るほか、静岡県内においても新東名高速道路より北側に位置している地域の多くがこの状況に陥り、国土交通省が無居住化するとしている予測を裏付けるものとなっています。

浜松市の進めるコンパクトシティ計画

浜松市の進める拠点配置計画 出典:浜松市都市計画マスタープラン
浜松市北部では上述したように、多くの集落が限界集落と呼ばれる状況となり、集落の維持管理が困難な状況となってきます。高齢者が点在して生活する状況となり、生活が困難となる高齢者の増加が予測されます。また、今後インフラの老朽化に伴い、浜松市のように広い範囲に集落が点在するような状況ではインフラの整備も困難となります。そこで考えられたのがコンパクトシティという考え方です。町を小さくして住居、学校、病院、商店、交通網などを集約し、住み良い町づくりを進めるとともに、インフラの整備負担を軽減することが可能となります。

上記の図でピンク及びオレンジの丸が付いた地域が居住誘導区域に指定されるものと判断されます。 基本的に居住誘導区域は都市計画区域内に設定されることから、都市計画区域では無い鎮玉地区が居住誘導区域に選定されることはありません。日本の人口の91%が都市計画区域に集中しており、中山間地の人の声が届きにくい状況となっています。居住誘導区域を外れた地域は白地地区と呼ばれ、今後行政サービスが低下する地区と位置付けられており、既に不動産業界では資産価値大幅に低下するとして、地域指定への注目が集まっています。

鎮玉地区の人口減少につながる国の方針

  • 土砂災害危険区域と立地適正化
玉の居住地の多くが土砂災害危険区域に指定され、住宅の建て替えが困難となる可能性があります。更に居住誘導区域から外れることによって、今後住宅会社による居住地の整備が困難となるほか、不動産価値が低下するため、担保としての価値が下がり、住宅を建てる場合の融資が受け難くなる可能性があります。
  • 公共施設の統廃合
学校の統廃合、診療所の統合、地域病院の病床数の削減、区の再編に伴う役場などの公共施設の統廃合などが加速する可能性 があります。特に、学校の統廃合は地域社会与える影響も大きく、若者世代の流出につながります。
  • 公共交通に対する補助の削減
高齢化に伴い、車を運転することのできない高齢者の増加が予測されます。一方、人口減少と立地適正化に伴う交通機関への支援削減から、バス路線が減少または廃止される可能性があります。地域の生命線ともいえるバス路線が廃止された場合、お年よりは買い 物や病院に行くことができず、高校生は通学することができなくなるなど地域社会に与える影響は計り知れないものがあります。

限界集落 山間部の暮らしが日本各地で崩壊している

私の住んでいる浜松市引佐町の鎮玉地区は、人口減少が著しく65歳以上の高齢者の割合が人口の半数を超える限界集落へと向かおうとしています。ただ、私がこのことを知ったのは、ある調査の関係で地域の人口を調べる機会があったからで、まさか自分の住んでいる地域がこんな状態にあるとは思ってもいませんでした。  

なんとなく、人が減って高齢化が進んでいるような気がしていましたが、現況は、限界集落への移行段階である55歳以上の割合が50%を超える準限界集落と呼ばれる段階にまで至っていました。更に、人口の階層構造や出生率からみると今後10年以内に限界集落となるのが確実な状況です。  

この地域は、新東名高速道路が浜松いなさインターチェンジから車で5分程度の位置にあり、浜松市の市街地からも車で30分程度であることから、限界集落などという言葉からは無縁の地域だと思っていました。私の描いている限界集落はもっと山間部のできごとで、昔から人の少なかった地域で起こるものだと思っていました。

しかし、調べてみると鎮玉地域より更に市街地に近い地域も限界集落の危機に陥っていることが分かりました。浜松市では限界集落と呼ばれる地域がどんどん南側に拡大し、中心市街に近い地域のみの人口が増加し、その他の地域では人口減少が著しい状況です。

若い人たちや、中高年に将来どのような場所に住みたいですかというアンケートを行うと、必ず緑の多い場所、将来は田舎で農業などをしたいという希望が上位を占めますが、現実には中心部への人の凝縮が加速している状況です。  

そして、このことは静岡県全体の問題でもあります。静岡県の人口流出率は北海道に次いで第2位という発表がありました。関東圏と名古屋という大都市に挟まれ、温暖で暮らしやすいと思っていた静岡県からどんどん人口が大都市圏に流出しています。  

なにが人々を都市部に駆り立てるのか私には分かりません。コンクリートに囲まれ、時間に追われる町の生活、高い家賃やローンの返済、様々ことに縛られ、物音などに注意しながら一生を生きていくのが幸せなのでしょうか。 もちろん、人が生きていくなかで様々な価値感があってもいいと思います。しかし、今山間部の暮らしが日本各地で音を立てて崩壊していっています。  

人は長い歴史の中で常に土と緑を感じて生きてきました。そして、都会で暮らす多くの人も土と緑の大切さを感じていると思います。浜松市引佐町鎮玉地区、人口は減っていますがいいところです。  

緑の町で暮らし、市内の会社に通い、週末は農業。
人生の選択肢に鎮玉地区を加えてみてください。

街路灯のLED照明化について思うこと

LED化による生態系の影響

最近各地の防犯灯、道路照明、信号機のLED化が進められています。青色発光ダイオードのノーベル賞受賞もあってLEDの注目は益々高まっています。小電力で明るく、灯具の寿命も長いなどまさにいいことずくめのような感じがしますが、問題点は無いのでしょうか。  

私の専門は自然環境なのですが、街路灯のLED化についていくつか気になっていることがあります。  

自然のサイクルというのは、当然昼明るく夜暗いという太陽を中心とした日照サイクルによって形成されています。商業施設や工場、道路周辺など夜間強い照明を使用する場所では植物の結実阻害、昆虫の光に対する誘引、渡り鳥やウミガメなどへの影響も指摘されています

私の住んでいる地域は、ホタルの生息地として知られていますが、昨年ホタル生息地周辺の防犯灯がLED照明に変えられ、その後ホタルの光が確認でき無い時期がありました。所属しているNPO法人を通して自治会に相談したところ、ホタルの発生する時期だけ防犯灯にカバーを付けさせて頂くことになり、ホタルの発光を確認することができるようになりました。  

光のイメージこのような夜の明るさや強い光が人間の睡眠に影響を及ぼすことが知られています。寝る前に強い光を見ることによって睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし、結果として睡眠が浅くなるなどして十分な睡眠を確保することができないことが問題となっています。人間を中心とした生態系は昼と夜が交互に繰り返されるというあたりまえの周期によって成り立っています。  

現在、日本各地で夜の暗さを大切にするという活動が行われています。私の住む浜松市でも夜の明るさを大切にするために「音・光・香り条例」が制定され、夜の明るさを大切にするために不必要な強い照明を制限することが定められています。  

もちろん、道路照明や防犯灯は必要な照明ですが、LEDという高性能の照明が今後生態系や照明灯が設置されている周辺に住んでいる住民に対してどのような影響を及ぼすのかはまだまだ未知の部分があります。  

夜を明るく照らす防犯灯は私たちの暮らしに安心を与えてくれていますが、本当の安心は暗い夜空の中にあるのかもしれません。

浜松市 音・かおり・光環境創造条例
自然の伝道師

浜松市北区引佐町の不思議な生き物 その2

珍しい生き物

引佐町にはこのほかにも、不思議な自然がいっぱいあります。まず有名なのはホタルです。引佐町の北部は静岡県でも最大級のホタルの生息地で、6月のはじめには幻想的な光のショーを観るために多くの人が訪れます。

でも、引佐町にはこのほかにも不思議な自然がいっぱいです。みなさんはタガメやゲンゴロウという昆虫を知っていますか、いずれも水の中に棲む大型の肉食昆虫で、水中の王者とも言える昆虫です。これらの昆虫類は現在絶滅の危機に瀕しており、静岡県内でこれらの昆虫の生息が確実に分かっているのは引佐町北部のみです。

引佐町北部には、このほかにギギ類というナマズを小型にしたような魚類が以前は生息していたことが知られています。ギギ類にはいくつかの種類があってそれぞれの種の分布は狭く、個体数も少ないことから国の天然記念物に指定されている種もあります。

静岡県には正式なギギ類の生息記録は無く、引佐町北部に生息するとされていた種は新種の可能性もあるということで、その後何度か調査が行われましたが現在でもその生息は確認されていません。人知れずに絶滅してしまったのかもしれませんが、まだどこか人目につかないところに生育しているのかもしれません。

引佐町北部にはこのほかにもいろいろな動物が生息しています。イノシシ、サル、シカ、カモシカ、キツネ、タヌキ、アナグマといった哺乳類、タカの仲間のクマタカ、オオタカ、サシバ、サンコウチョウ、アカショウビンといった珍しい鳥も生息しています。

サンコウチョウは、その鳴き声が月・陽・星と聞こえることから三つの光鳥という意味でサンコウチョウと名付けられた鳥で、鳴き声も変わっているのですが、姿はもっと変わっていて尾の長い不思議な形をしている鳥です。

また、アカショウビンはカワセミの仲間ですが、真っ赤なその姿から火の鳥と呼ばれている鳥で、キョロロロローという澄んだ大きな声で鳴く声を聴くことはできるのですが、姿を見ることは困難な鳥です。


クマタカ

また、夜になるとフクロウやムササビの姿を見ることができるなど、まさに引佐町北部は自然のワンダーランド、でも本当にすごいのはそこに住んでいる変わった人間たちです。

新東名浜松いなさインターを降りて車で5分、珍しい生き物と変わった人間を見に、是非引
佐町に遊びにきてください。

 


浜松市北区引佐町の不思議な生き物 その1

珍しい植物

私が住んでいる静岡県浜松市引佐町は静岡県の北西部に位置する山あいの町です。新東名高速道路の浜松いなさインターを下りて車で5分ほどの位置にあります。見た目には山あいののどかな集落ですが、この地域は他には無い不思議な自然がいっぱいです。

引佐町北部の渋川地区~黒田地区にかけては、蛇紋岩地という特殊な岩盤地が存在します。岩の表面に蛇のような模様が現れることからこの名があり、超塩基性のやせ地で植物の生育にはあまり向いていない環境です。しかし、この蛇紋岩が実は珍しい生き物の宝庫となっています。植物の生育に向いていないことが、変わった生き物の生育を助けているのです。

植物はいつも競争しています。植物の生育に適した環境では、生長が早く競争に強い植物が地面に密生してしまい、競争に弱い変わり者の生き物たちは競争に負けて生育することができません。

でも、蛇紋岩地はやせ地であるため、植物がまばらにしか生えることができず、変わりものの生き物たちの生える隙間が生まれ、変わりものの生き物たちはこのような隙間を利用して生育しています。

引佐町の北部には渋川という集落があり、この集落の名前が付いた植物が3種類あります。シブカワシロギク、シブカワニンジン、シブカワツツジという植物です。小さな集落の名前が付いた植物が3種類もあるということは非常に珍しいことです。

これらの植物は、渋川地区を中心に四方浄地区などの非常に狭い地域にのみ生育している珍しい植物です。


シブカワシロギク
シブカワシロギク:
見た目には地味な植物です。秋になると白く小さな花をつけます。地味な植物のため誰にも気づかれないうちに絶滅の危機に瀕しています。
シブカワツツジ
シブカワツツジ
3種類の植物の中で唯一地元でも良く知られた植物で、花の時期にはツツジ祭りが開催されます。

シブカワニンジン
シブカワニンジン:ニンジンの名が付けられていますが、ニンジンの仲間では無く、ツル性の植物で8月頃に筒状の白い花を付けます。

シブカワツツジは地元の人にも広く知られ、花の咲く頃にはツツジ祭りが盛大に開催されます。しかし、シブカワシロギクシブカワニンジンは地元の人にもほとんど知られていません。

特に、シブカワシロギクは環境省のレッドデータブックで絶滅危惧ⅠA類に指定されている植物で、最も絶滅の危険が高いランクに位置付けされています。全国でもこの地域にしか生育せず、地元の名前が付けられたこの植物が、地元の人たちにもほとんど知られていない状態で絶滅の危機に瀕しているのは非常に残念なことです。

蛇紋岩地には、このほかにも絶滅の危機に瀕している珍しい植物がたくさんあります。蛇紋岩地に多く見られるカンアオイはギフチョウの餌となる植物で、渋川の枯山と呼ばれる地域には多くのカンアオイが生育しており、春になると春の女神と呼ばれるギフチョウの舞をみることができます。

このほか、エビネを中心としたランの仲間のほか、カザグルマという白く大きな花を咲かせるつる性の植物を見ることができます。大きな花の形がカザグルマに似ていることからこの名があり、園芸種のクレマチスの原種となった植物です。


カザグルマ:
5月の終わり頃に白く大きな花を付けます。つる性の植物で一面に花を付けた姿は見事としかいいようがありません。


エビネ:
言わずと知れた代表的なランですが、蛇紋岩では比較的多く生育しており5月頃に美しい花を咲かせます。
このつづきは↓

珍しい生き物


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