食品としてのニワトリ
以前、食品添加物や住宅建材に含まれるホルムアルデヒドなど身近な化学物質の危険が問題となり、少しずつではありますが危険な食品添加物や建材に含まれる化学物質の規制が進みこれらの問題は改善されつつあります。しかし、まだまだ改善されていない問題も多くあるほか、新たに発生している問題もあります。改善されていない問題の代表格が卵を中心とした畜産物の問題であり、新たに発生している問題の代表格が抗菌剤や芳香剤の問題です。
私は、仕事で生き物の調査を行っていますが、野生の鳥の多くは卵を産むときはとても神経質になっていて、少しの刺激で卵を産むのをやめてしまったり、卵を温めるのをやめてしまったりします。鶏も自然に近い状態で放し飼いにすると暗く周りの緩衝を受けにくい場所で卵を産むことが知られています。
しかし、私たちの食べている卵の多くは窓の無い鶏舎の中で1坪あたり120羽を超える過密な環境でされ、身動きをとれない環境の中で機械のように卵を産み、1年~2年経過し産卵率がおちたところで一斉にプロイラーとして処理され、鶏肉として出荷されます。
現在、日本ではバタリーゲージと呼ばれるワイヤーでできたケージの中にニワトリを入れ、それを何段かに重ねて飼育する方式が一般的となっています。平均すると1羽当たりのスペースは22cm×22cm程度で、羽も伸ばせない薄暗い環境の中でニワトリたちは一生を終えます。
ヨーロッパではこのようなニワトリの飼育方法が問題であるとされ、一部の国ではこのような飼育方法を禁止していますが、日本ではまだ大半がこの飼育方法によって卵が生産されています。当然このような環境下では日常的に病気の発生リスクが高く、一度病気が発生してしまえば狭い密集した鶏舎の中であっという間に病気が蔓延してしまいます。
このため、病気の発生を未然に防ぐために鶏を含めた家畜類には多くの抗生物質が使用されています。人間の病気の治療などを目的とした抗生物質の使用量は年間500トン程度ですが、家畜にはその倍以上の1300トン程度の抗生物質が使用されています。
卵や鶏肉は物価の優等生ですが、そのような陰にこのような危険が潜んでいることはあまり公になっていません。環境や動物愛護に関心の高いヨーロッパでは、このようなニワトリの飼育形式が問題となって、エンリッチドケージなど、鶏が自由に動き回れるケージでの飼育に切り替えています。私たちもこのような問題を真剣に考える必要があるのではないでしょうか。
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