山を捨てる日本 その2

中山間地の過疎化が加速する

この指定は、「傾斜角30度以上、高さ5m以上ののり面」などの数値によって一律に「土砂災害危険区域」「土砂災害警戒区域」を指定するものです。

国は土砂災害防止法の中で、「住宅等の新規立地の抑制」、「既存住宅の移転促進」をうたっています。

特に問題なのは「既存住宅の移転促進」です。この指定を受けた宅地についても住宅の建て替えは可能なのですが、住宅を建て替える際には家の裏側にある土砂が崩壊した際に、その土砂が家に流れ込まないような構造物を造る必要があります。

しかし、この構造物が家の価格より高くなってしまう場合もあります。更に、「土砂災害危険区域」に指定された場合、不動産取引の際にも土砂災害危険区域であることを周知する必要があり、移転しなくてはならないが土地も売れないという事態が発生する可能性もあります。

このような指定を受けて移転を行う場合は一定の補助があったり、場所によっては公的事業として土砂災害防止対策を行うようですが、山間部の多くの地域では移転を促進するための措置がとられるのではないかと危惧しています。

この法律は本当に国民の生命を守るための法律なのでしょうか。

土砂災害危区域に指定される地域のなかには、災害も無く数百年間その土地に住み続けているような場所もあります。土砂災害の危険性は土地の傾斜角だけでなく、地質、地下水、植生など様々な複合的な要因によって発生するものです。

特に、植生環境の衰退は重要で、多様な森林環境を有する地域では植物の根がしっかりと土壌を固定するほか、大量に降り注いだ雨水についても一度に地表を削りながら流れ出すのでは無く、植物を通して地下に多くの水が浸透し、土砂の崩壊を防いでいます。

しかし、現在多くの森林が放置され真っ暗で下草も生えていない森林が多くなっています。荒れた森林は土壌の保持能力が弱く、災害の発生しやすい状況にあります。近年、土砂災害が増加している要因は山地の荒廃にあるといってもいいのではないかと思っています。

これらの指定によって、山地に住む人たちが山を離れた場合、山の荒廃は更に加速していくことでしょう。しかし、山地の荒廃は決して山間部に住む人たちだけの問題ではありません。

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