身近な恐怖、知って心配、知らずに大変 その2

行き過ぎた抗菌の行方


最近テレビで芳香剤や抗菌剤などのコマーシャルを見ない日はありません。店頭の商品にも抗菌性をうたった商品が多く並べられています。近年医療分野では耐性菌の出現が問題となっています。大腸菌などの細菌類は30分程度で一世代を終えます。以前ゴキブリやハエなどの殺虫剤に対する耐性が問題となったことがありますが、ゴキブリは半年~1年で1世代を、ハエは2週間程度で1世代を終えますが、細菌は30分という短い周期で一世代を終えることから、ゴキブリやハエよりはるかに短い周期で抵抗性を得ることができます。

これに対して一つの薬剤を開発するのには10年の年月が必要と言われています。このままではいずれ薬剤の効かない菌が蔓延するのも遠い将来のことではないのかもしれません。

殺虫剤の試験方法の一部に90%致死量という効果を表す試験方法があります。これはある特定の試験に用いたハエを90%殺すのに必要な殺虫剤の濃度を求めるための試験です。

しかし、反対をいえば10%近くの個体は生き残るということです。そしてこの生き残った10%の個体が殺虫剤に対する耐性を有するようになります。

研究所などで抵抗性のあるハエやゴキブリを人為的に作り出すことがあります。生き残った10%の個体を繰り返し飼育していくことで殺虫剤に対して抵抗性のあるハエやゴキブリを作りだすことができます。

それでは、現在巷にあふれている抗菌剤や殺菌剤はどうでしょうか。殺虫剤などの一時的なものと違って抗菌製品の抗菌力は長くその効果が持続するものが多くなっています。

細菌や私たち人間の皮膚も常にそれらの抗菌製品に触れています。私たち人間も細菌も生きた細胞から構成されています。抗菌製品は一部の殺菌成分などの濃度を薄めて人体には影響が少ない程度の濃度で、製品の表面にコーティングしたり練り込むなどして使用しています。

死なない程度の濃度で抗菌剤と殺菌剤が接触することによって、細菌が新たな抵抗性を有する可能性がありますし、皮膚の細胞になんらかの影響が及ぼされる可能性があります。

人間の皮膚には常在菌と呼ばれる菌が付着しています。これらの菌は特に体に被害を及ぼしている分けでは無く、反対に一部の有害な細菌の侵入を抑えてくれる働きがあることが分かっています。

私たちの腸内には100兆個もの細菌が共生していることが分かっています。これらの細菌は消化を助け体のバランスを保つのに役立っています。過度な抗菌剤や殺菌剤の使用は結果として、私たち人間と長く共生してきた共生菌に影響を与えている可能性があり注意していく必要があります。


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人工的な香りの弊害

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